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第7回機能水シンポジウム 2000東京大会



アルカリイオン水の臨床試験

○藤山佳秀、小山茂樹、馬場忠雄、田代博一小野ひろみ、北洞哲治、
滋賀医科大学第2内科、国立大蔵病院消化器科、同臨床研究部、


Clinical Evaluation of alkaline-ionezed Water for Alimentary Complaints

○Yoshihide Fujiyama,Shigeki Koyama,Tadao Bamba,
Hirokazu Tashiro,Hiromi Ono,Tetsuji Kitahora
Department of Internal Medicine II,Shiga University of Medical Science,
Department of Gastroenterology and Institute of Clinecal Research,
National Ohkura Hospital.



Multicenter placebo-controlled double-blind clinical study was performed to evaluate the efficacy of the alkaline-ionized water drinking on the alomentary complaints;complaints associated with maldigestion,intestinal hyper-fermentation or abnormal bowel movements. Overall improvement scores achieved by the drinking of alkaline-ionxed water(pH9.5) was significantly higher as compared to placebo when analyzed by x 2 test(p=0.048). It was also demonstrated that alkaline-ionzed water had significant advantage in the management of chronic diarrhea(p=0.034). However,iti is recommended through our prior preliminary clinical study that alkaline-ionized water should be used in the pH range of pH9 to pH10. Alkaline-ionized water with the higher pH(>10) might induce unfavorable effects hyperpotassemia or irritable gastric contraction.


要 旨:アルカリイオン水整水器検討委員会は、平成4年以来アルカリイオン水飲用の臨床効果を検討するため、これまで段階的に基礎臨床試験、予備臨床試験、長期投与臨床試験、二重盲検比較臨床試験を実施してきた。基礎臨床試験では24時間胃内pH・内圧測定の結果から、pH9のアルカリイオン水で制酸効果を確認したが、pH10以上の過剰なアルカリ化は、血清K値の上昇、刺激性胃収縮の副反応がみられることを示し、これを受けてアルカリイオン整水器協議会は「医療用物質生成器安全基準」改定を行っている。

予備臨床試験は、pH10のアルカリイオン水を用いたオープン試験を行い、1リットル2週間飲用による腹部不定愁訴の全般改善度は主治医判定で改善以上47%、やや改善以上88%であり、被験者印象調査での「少し良くなった」を含めた改善度は59%であった。

長期投与臨床試験ではpH9.5のアルカリイオン水1リットルを1年間飲用させ安全性を検討したが、血清K値の一過性の軽度の上昇を認めた以外に問題となる副反応は認めなかった。

二重盲検比較臨床試験では、予備臨床試験での検討を踏まえ、対象を消化不良・胃腸内異常発酵・便通異常による腹部愁訴として浄水をplaceboとして500mlを4週間投与して検討した。163例における総合改善度を有効例と非有効例に分けた場合、x二乗検定でアルカリイオン水はp=0.048の有意水準で有効性が見出された。
以上により、アルカリイオン水はpH9〜pH10の範囲内で上記腹部不定愁訴に有用なことが確認された。



はじめに : 腹部不定愁訴は日常もっともしばしば経験される身体不調の愁訴であるが、多くは自制内で医療機関を訪れるにいたらず経過しているケースも少なくないと推測される。実際、腹部不定愁訴で医療機関を受診するケースでは、近年の飛躍的に進歩した種々の画像診断をはじめとする臨床検査にても器質的な異常を指摘し得ないケースが少なくない。このようなケースに対しては、一般にIrritble Gutという概念が用いられていることが多いと思われる。この中には、胸焼け、嘔気、嘔吐、食欲不振、上腹部痛・腹部膨満感などの上部消化管に由来する消化器症状に対する non-ulcer dyspepsia (NUD)、慢性の腹痛あるいは腹部不快感、便秘・下痢の便通異常などの下部消化管に由来する消化器症状に対する irritable bowel syndrome(IBS)が含まれる。Mayo Clinic Bowel Disese Questionaire を用いたアンケート調査をある職域を対象(939名)として実施したところ、実に34.5%が何らかの上部消化管不定愁訴を、17.8%が下部消化管不定愁訴を持っていた。便通異常は37.3%にみられ、内訳は便秘13.3%、下痢14.5%、下痢・便秘の交代性便通異常9.5%となっている。腹痛については、61%の回答者が過去1年間に1回以上経験していた。アルカリイオン整水器は、こういった腹部不定愁訴(消化不良・胃酸過多・胃腸内異常発酵・慢性下痢および制酸)の効能効果について、昭和41年に薬事法による製造承認を受けている。アルカリイオン整水器委員会は、その効能効果を検証する目的で組織され、平成4年以来、多方面からの検討を続けてきたが、ここでは、そのうち臨床試験の成績について報告する。

基礎臨床試験 : 本試験では、24時間胃内pH・内圧測定法により、6名のボランティアを対象にpH9、pH10、pH11のアルカリイオン水飲用の胃内pHと胃内圧に及ぼす効果と、種々の臨床検査からの安全性を検討した。試験水は一日1リットルを7日間飲用させ、7日目に胃内pH・内圧測定を行った。その結果、胃内pHは各試験水飲用にてスパイク状の上昇を認めたが、pH9のアルカリイオン水飲用で pH3 holding time(24時間の間で胃内pH3以下の占める割合)の短縮がみられ、制酸効果が確認された。しかし、pH10、pH11の試験水では pH3 holding timeの短縮は得られず、逆に血清K値の上昇が見られたほか、pH11の試験水では異常胃収縮の発現がみられた。これを踏まえ、制酸にはpH9の試験水が有効であり、過剰なアルカリ化は副反応をもたらすことをアルカリイオン整水器協議会に答申し、同協議会は「医療用物質生成器完全基準の改定を行った。

予備臨床試験 : 本試験は、腹部不定愁訴を有する17名のボランティアを対象に、オープン試験としてpH10のアルカリイオン水1リットルを連日2週間飲用させ、その臨床効果を検討した。総合改善度は著名改善18%、改善29%、やや改善41%、不変12%で悪化は認められなかった。被験者の印象調査では回答したうちの59%が好ましい印象を持っていた。症状改善効果は、胃重感、食欲不振、腹部膨満感、胸焼け、おくび、腹痛、残便感の順でみられた。また、不安感、いらいら感、緊張感、などの副次的な改善効果も認められた。便通については、飲用前が1行/日4名、5行以上/日3名、4行/日2名、2行/週5名、1行/週3名が、1行/日10名、4行/日1名、2行/日5名、2行/週1名で下痢・便秘ともに改善をみている。

長期投与臨床試験 : 本試験では、健康ボランティア12名を対象にpH9.5の試験水を12ヶ月間飲用させ、自覚症状ならびに臨床検査値の変動から安全性について検討した。12名中4例で血清K値の上昇(3ヶ月後2名、6ヶ月後、9ヶ月後各一例)を認めたが何れも軽度の以上上昇であり、自他覚症状はなく。1週間後の再検では正常値に復していた。その他の検査項目ではアルカリイオン水飲用に関連した異常変動は認めなかった。

二重盲検比較臨床試験 : 以上の臨床試験の結果を踏まえ、pH9.5のアルカリイオン水整水器と浄水機能のみを有する機器(プラセボ)を無作為に割り当てる二重盲検比較臨床試験を行った。対象は、消化不良、胃酸過多(胸焼け・胃部不快)、腸内異常発酵(ガスの異常排泄・腹鳴)、腹部膨満感、慢性下痢・便秘を有し、インフォームドコンセントの得られた被験者163名で、試験水1日500mlを4週間飲用させた。全試験終了後に開封した割付はアルカリイオン水 群84例、プラセボ群79例で、背景因子に両群間で有意は過多よりは認められなかった。総合改善度はWilcoxon検定では有意水準に至らなかったが、有効例と非有効例に分けてx二乗検定を行うとアルカリイオン水群(有効79%、非有効21%)がプラセボ群(有効64.9%、非有効35.1%)に対しp=0.048の水準で有効であった。愁訴別改善度では同じくx二乗検定で慢性下痢(p=0.034)、腹部不定愁訴(p=0.025)でアルカリイオン水飲用に関連した重篤な副反応はないものと判断された。

結 論 : 以上、アルカリイオン整水器検討委員会にてこれまで実施した臨床試験の結果について報告した。pH9.5のアルカリイオン水は機能性飲料水としてIrritable Gutに代表される腹部愁訴に有効である。しかし、その有効性の機序については不明な点も少なくなく、今後の更なる解明を期待したい。




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