機能水シンポジウム

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第6回機能水シンポジウム'99東京大会

電解水の正しい知識と応用を目指して
-企画と使用ガイドラインの整備―

期 日 平成11年11月25日~26日
会 場 北里研究所北里ホール(東京都港区5-9-1)
主 催 (財)機能水研究振興財団
機能水医療研究会、日本口腔機能水学会、アルカリイオン水整水器検討委員会、ウォーター研究会
後 援 厚生省、農林水産省、北里研究所
協 賛 電解水農業研究会、関西ウォーター研究会、機能水プロジェクト、九州機能水研究会
大会長 小宮山寛機(北里研究所)
顧 問 糸川嘉則(福井県立大学・京都大学医学部名誉教授)
荒田洋治(㈱機能水研究所・東京大学名誉教授)
委 員 堀田国元(国立感染症研究所)、北洞哲治(国立大蔵病院)、吉川敏一(京都府立大学)、岡田淳(NTT東日本関東病院)、中村良子(昭和大学藤が丘病院)、芝輝彦(昭和大学歯学部)、西本右子(神奈川大学理学部)岩澤篤郎(昭和大学藤が丘病院)、鈴木鐵也(北海道大学水産学部)、小暮実(東京都中央保険所)、五十嵐誠一郎(食品総合研究所)、守田和夫(鹿児島大学農学部)、染野茂夫(アルカリイオン水整水器協議会)、藤原昇(強電解水企業協議会)、中山武久(ウォーター研究会)


開催にあたって


この度、多くの方々のご協力により第6回機能水シンポジウムの開催にこぎつけることが出来ました。誠にありがとうございます。
従来、本シンポジウムは機能水の科学的理解と発展を目的に機能水研究振興財団が中心となって開催してまいりましたが、本年度はアルカリイオン水整水器検討委員会、ウォーター研究会、機能水医療研究会、口腔機能水学会、電解機能水農業研究会などのより積極的な協力を得て組織委員会を組織し、例年に勝るとも劣らぬ充実した内容にすることが出来ました。

機能水はその種類によって生体の恒常性の維持あるいは消毒衛生管理など様々な効果を発揮します。特に電解水は、医療、歯科領域、食品、農業など多方面で応用が拡大してきており、最近では外国でも使用されるようになってまいりました。また、基礎研究の進展と相俟って、今年4月に開催された第25回日本医学会総会をはじめとしていろいろな学会において電解水がセッションとして取り上げられるようになってまいりました。しかしながら、実態調査によりますと、機能水の性質、効果とその限界などが正しく理解されて利用されているとは限らず、いろいろな混乱や問題が依然として見うけられております。
そこで今年度は、「電解水の正しい知識と応用を目指して」をメインテーマに、主として電解水の規格、性状、使用の実態について整理するとともに使用ガイドラインに向けての発表や討論を行います。
子の方針を基に、東邦大学医療短期大学教授辻明良先生に「消毒薬の殺菌効果評価法」と題する教育講演をお願いし、さらに特別講演として、わが国の感染症研究の権威である国立感染症研究所所長竹田美文先生に「感染症新法と感染症の制御における課題」についてお話いただくことになりました。
今回は諸般の事情から従来に比べて会場はやや狭く、運営についてはいろいろと不行き届きな点があろうかと存じますが、参加者皆様のご協力により、実りあるシンポジウムにして頂きたいと心からお願い申し上げます。
なお、最後になりましたが、シンポジウム開催は各実行委員の献身的な行動により成し得たことであり、さらに北里研究所、北里大学および関係各位のご協力を頂きました。ここに紙面をお借りして深甚の謝意を表します。

第6回機能水シンポジウム’99東京大会
大会長   小宮山寛機



腹部愁訴に対するアルカリイオン水の有効性の検討

ーニ重盲検試験ー


田代博一、北洞哲治、小野ひろみ*、藤山佳秀**、馬場忠雄**
国立大蔵病院消化器科、*同臨床研究部、**滋賀医科大学第2内科



Clinical evaluation of alkaline-ionezed water for abdominal complaints

-placebo-controlled double-blind study-



The effect for alkaline-ionized water on the abdominal complaints was evaluated in placebo-controlled double-blind study.Overall improvement scores of alkaline-ionized water showed to was wffective compared with placebo and in particukar to be meaningful significantly in slightness cases,chronic diarrhea cases and abdominal comlaint of general malaise cases. Alkaline-ionzed water group had not a halt example.and the significant abnomality of side effect and test values was watched neither. It was suggested that alaline-ionized water si confirmed to be effective and safe compared with placebo.



要旨:腹部愁訴に対するアルカリイオン水の有効性について、浄化水との比較ニ重盲検試験により臨床的に検討した。総合改善度は、アルカリイオン水群はプラセボ群に比較して有効であり、特に軽度症例では有意に有効であった。慢性下痢、便秘、腹部(不定)愁訴に分けて、改善度を検討すると、慢性下痢、腹部(不定)愁訴の症例では、アルカリイオン水群はプラセボ群に比較して有効であった。プラセボ群において慢性下痢例1症例において症状増悪したため、中止したが、アルカリイオン水群では中止例はなく、いずれも重篤な副作用、検査値の異常は認められなかった。アルカリイオン水群が、慢性下痢、腹部(不定)愁訴および総合改善度(腹部愁訴の軽減)において浄化水と比較して、有効であることが、安全性と共に確認された。

はじめに
アルカリイオン整水器は、昭和41年に制酸、胃酸過多、消化不良、胃腸内異常発酵、慢性下痢などの胃腸症状の効能効果について薬事承認を得て、これまで広く飲用されてきたが、医学的・科学的な評価が十分とはいえない。今回アルカリイオン水の胃腸症状に対する臨床的効果を多施設多症例において検討することを目的に研究を行った。特にアルカリイオン水と浄化水との二重盲検試験を行ない、アルカリイオン水そのものの安全性および有効性について検討した。

対象および方法
対象は、年齢は20歳以上で、消化不良、胃腸内異常発酵(ガスの異常排出、腹鳴)、便通異常(慢性下痢、便秘)による腹部愁訴を有し、十分なインフォームド・コンセントにて同意を得た患者163名(男34名、女129名、21~72歳、平均38.6歳)方法は、多施設によるアルカリイオン水と浄化水との二重盲検比較試験を行なった。市販のアルカリイオン整水器にポンプ式カルシウム添加装置を付加した機器を被験者の各家庭に設置した。試験水としてアルカリイオン水はph9.5、カルシウム濃度30ppm以上として、プラセボ群は、整水器と同形で浄水機付き装置より出る浄化水とした。
試験機器は、コントローラーが無作為に割り付け、key code は試験終了後の開封までコントローラーが密封の上、厳重に保管し、全試験終了後、開封した。
試験水を朝200ml、他は500ml/日以上になるように1ヶ月間飲用として、試験開始前、試験終了後に血液検査、尿検査、便検査を施行し、自覚症状、便通、随伴症状については症状日誌に記載した。試験終了後、症状日誌と検査所見より検討した。

結果
  1. 症例の内訳

    効果判定の解析対象例は163名で、アルカリイオン水群84例、プラセボ群79例であり、背景因子として、性別、年齢、基礎疾患などいずれも有意差は認めなかった。



  2. 総合改善度

    腹部愁訴の総合改善度は、アルカリイオン水群は、著名改善2例(2.5%)、改善26例(32.1%)、やや改善36例(44.4%)、不変13例(16%)、悪化4例(4.9%)であり、プラセボ群では、著名改善4例(5.2%)、改善19例(24.7%)、やや改善27例(35.1%)、不変25例(32.5%)、悪化2例(2.6%)であった。アルカリイオン水群とプラセボ群との群間比較の結果は、Wilcoxon検定により5%有意水準における有意差はなかったが、p-valueは0.22の水準でアルカリイオン水群はプラセボ群に比較して有効である傾向が見られた。
    総合改善度を有効例と非有効例とに分けてx2検定(連続性の補正は無し)を行なうとアルカリイオン水群は、有効64例(79%)、非有効例17例(21%)であり、プラセボ群は、有効50例(64.9%)、非有効例27例(35.1%)であり、p=0.048の水準でアルカリイオン水群はプラセボ群に比較して有意に有効である結果が得られた。
    腹部愁訴が軽度症例(83例)のみでみると総合改善度は、アルカリイオン水群(45例)は、改善11例(24.2%)やや改善22例(48.9%)。不変9例(20%)、悪化3例(6.7%)であり、プラセボ群(38例)では、改善3例(7.8%)やや改善17例(44.7%)、悪化1例(2.6%)であった。アルカリイオン水群はプラセボ群との群間比較により、有意に有効であった(p=0.033)。



  3. 基礎疾患別改善度

    基礎疾患を慢性下痢、便秘、腹部(不定)愁訴に分けて、改善度を評価し、有効性を検討した。慢性下痢では、アルカリイオン水群は、有効94.1%、非有効5.9%であり、プラセボ群では、有効64.7%、非有効35.3%であり、アルカリイオン水群はプラセボ群に比較して有意に有効であった。慢性下痢の軽度症例では、アルカリイオン水群はプラセボ群との群間比較により、有意に有効であった(p=0.015)。便秘では、アルカリイオン水群は、有効80.5%、非有効19.5%であり、プラセボ群は、有効73.7%、非有効26.3%であった。腹部(不定)愁訴では、アルカリイオン水群は有効85.7%、非有効14.3%であり、プラセボ群は、47.1%、52.9%であり、アルカリイオン水群はプラセボ群に比較して有意に有効であった。(p=0.025)



  4. 安全性

    プラセボ群において慢性下痢の1症例において症状増悪したため、中止したが、アルカリイオン水群では中止例はなかった。随伴症状が14例(8.6%)、アルカリイオン水群8例、プラセボ群6例にみられたが、重篤な症状はなかった。163例中31例(アルカリイオン水群16例、プラセボ群15例)に臨床検査値の変動が見られたが、アルカリイオン水群はプラセボ群に比較しても、問題となる検査値の以上変動は認められなかった。プラセボ群2例、アルカリイオン水群1例に結成K値の上昇例が見られたが、再検査の結果では、正常域に回復しており、一過性の変動であったと考えられる。


結語

アルカリイオン水と浄化水との二重盲検比較臨床試験により、アルカリイオン水が、慢性下痢、腹部(不定)愁訴および総合改善度(腹部愁訴の軽減)において浄化水と比較して、有効であることが認められた。又、安全性についても確認され、アルカリイオン水の有用性が臨床的にも示された。


TOP 参考資料






骨組織の形成と維持におけるアルカリオン水の影響

高橋 玲*、張 震華*、糸川嘉則**
*京都大学大学院医学研究科病理系腫瘍生物学講座
**福井県立大学



Effects of calcium alkaline ionzed drinking water on the formation and maintrnance of bone tissue in rat were investigated. In the absence of calcium in the diet,no obvious calcification was observed,and only osteoid formation was prominent. Striking difference was found in the groups with dietsof 30% and 60% calcium;rats with calcium alkaline ionzed water showed least osteoggenesis disturbance. Tibia and humerus are more susceptibe to calcium deficiency than femoral bone. These results may indicate that calcium in drinking water may effectively supplement osteogenesis in case of dietary calcium deficiency. Mechanisms involved in bone formation such as absorbance rate of calcium from the intestine and the effects of calcium alkaline ionzed drinking water on maintaining bone structure in case of aging or xalxium deficient conditions are under investigation.


最近、特に注目を浴びている骨粗鬆症とは、「骨梁の減少と骨の微細構造の劣化によって骨が脆弱となった状態」である。その成因の一つに従来よりカルシウム(Ca)代謝の異常が指摘されているが、それらはCa摂取量の不足、腸管からのCa吸収率の低下、尿中Ca排泄増加などによりひき起こされる。骨は健常な場合、規則正しい代謝を行なって古い骨を吸収し、新しく骨形成をし、その強度を維持し支持組織としての機能を発揮している。細胞レベルで骨のremodelingは活性化(activation)、吸収(resorption)、逆転(reversal)、基質形成(matrix synthesis)、石灰化(mineralization)、という過程を経て行なわれることが明らかとなってきている。また、その他の重要な働きとしてミネラルの貯蔵を行ない、特に血液中のカルシウム濃度をコントロールするために腸管、腎臓と連携プレーをしている。このような骨代謝に何らかの異変が生じた場合に結果的に形態変化な異常を生じる。今まで、我々はアルカリイオン化カルシウム水(アルカリイオン水)が骨代謝の反応系に与える影響とその効率について主として骨量の変化を解析してきたが、今回は更に組織学的な面から検討を加えた。すなわち、アルカリイオン水、水道水、乳酸カルシウム水をラットに与えて、骨形成の形態学的および動態学的変化について比較検討を行った。
3週齢のWistar系雄性ラットを飼料と飲料水の条件から12群に分けた。飼育飼料は正常飼料中のCa量を100%とし、0%、30%、60%、100%のCaを含有する飼料を作成し、自由節食とした。飲料水は3種類、すなわち水道水(市水約6ppmのCa)、乳酸カルシウム水(40ppmのCa)、およびアルカリイオン水{40ppmのCa、pH=9㈱オムコ・OMC整アルカリイオン整水器NDX-4LMC、改良型}を自由飲水させた。体重、飲水量、飼料摂取量および飲料水中CAの含有量を毎日測定した。19日目と、25日目にTetracycline Hydeochloride を30mg/Kgとなるように48時間に飲料水を加えた。30日目にネンブタール麻酔下で採血し、脛骨、上腕骨、大腿骨を摘出し、非脱灰標本を作成しVillanueva bone stain およびVillanueva goldner stain にて骨形態および骨回転を観察した。
同一の飼料中Ca摂取量群で3種類の飲料水を飲用させた各郡について比較したが、体重増加率、飼料摂取量、飲水量には有意の差は認められなかった。脛骨と上腕骨重量および骨中のカルシウム濃度はアルカリイオン水投与群において有意に高かった。
飼料中Ca/0%群では脛骨の占める割合が著しく増大した。飲料水間での差は著しくなかった。また、テトラサイクロンの取り込みは脛骨、上腕骨では殆ど認められず、大腿骨においてわずかに見られた。従って結果的には骨形成は類骨形成までみられるが、石灰化がほとんどおこっていないか、あるいは新生骨の大部分が吸収されている可能性が示唆された。
飼料中Ca/30%と60%の群では、水道水<乳酸Ca水<アルカリイオン水の順にテトラサイクリンの取り込み帯に不規則性が目だった。飼料中Ca/100%の群では、水道水<乳酸Ca水<アルカリイオン水の順に骨形成が改善される傾向はわずかにみられたが、いずれにこいても、形成された骨の形態はほぼ正常に近い良好といえるものであった。
飼料中のカルシウムが不充分な状態ではアルカリイオン水は骨形成の改善に効果があると考えられた。また、骨形成傷害の程度は部位による差が見られた。すなわち、脛骨と上腕骨は骨形成傷害が大腿骨に比べてより高度にみられる傾向があった。
さらに、アルカリイオン水存在下では腸管からのカルシウム吸収率、腎臓からの排出調節、副甲状腺機能調節などを介して骨代謝に変化が生じる可能性が推定されるが、まず、血中カルシウム濃度に及ぼす影響を検討中である。また、老化促進マウスモデルあるいは加齢マウスを用いて、その骨脆弱化の程度が改善できるかどうかについても現在検討中である。

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