残留塩素測定--オルトトリジン法に関して

残留塩素測定法の改正 オルトトリジン法が廃止へ

平成12年12月26日付けで厚生省水道環境部長より各都道府県知事宛に「水道水質に関する基準の制定について」の一部改正について通達があった。
残留塩素の測定には、オルトトリジン試薬を使用するオルトトリジン法(OT法)が一般に利用されてきたが、今回の通達で2002年4月1日以降は禁止されることになった。
理由は従来からオルトトリジン試薬の毒性に関する知見等を踏まえて検査方法から削除したものである。
法的には週1回の測定であるが、東京都内のビルでは残留塩素の測定は毎日行うことを指導されている。

オルトトリジン法の代わりに従来からの分析法である(比色法)DPD法(ジエチル-p-フェニレンジアミン法)、電流法、もしくは、今回新たに加えられた吸光光度法で行うことになる。

吸光光度法の詳細はコチラ


簡易有効塩素測定法の変遷

簡易有効塩素測定は、
1909年、E.B.Phelps1)によってオルトトリジンを指示薬とする有効塩素の定性法から始まった。その後、塩素剤の消毒効果のメカニズムが詳細に研究され、遊離および結合残留塩素の存在が明らかとなった。

1942年、Marks2)3)によって、電流滴定法による遊離・モノクロロアミン・ジクロロアミンの分別測定が開発された。1957年、Palin4)は、遊離残留塩素の測定にはDPD法(diethyl-p-phenylenediamine)がオルトトリジン法に比べ優れている、と報告した。

1972年、米国マイルス社(現在のバイエル社)のBauerら5)により、シリンガルダジン(Syringaldazine :3,5-dimethoxy-4-hydroxybenzaldazine)を用いて遊離残留塩素を特異的に測定する試験紙法が開発された。

1980年、米国ETS社でシリンガルダジン法を原理とする試験紙が開発され、改良が加えられ、使用法および測定精度が向上したプール水用の水質検査試験紙6)が汎用されるに至った。



オルトトリジン法 orthotolidine method

排ガス中の塩素分析法の一つで、オルトトリジンを含む吸収液中に試料ガスを採取し、得られた呈色液の吸光度を測定し塩素を定量する。本法の適用濃度 範囲は0.2~10ppmで10ppm以上の濃厚試料の場合は吸収液で適宜うすめて 定量する。この方法は臭素、ヨウ素、オゾン、二酸化窒素、二酸化塩素などの酸化性ガスの影響が無視できる場合に適する(JIS_K0106)。水中の残留塩素 測定にも使われている。

シリンガルダジン法
1972年、Bauerらによって開発されたシリンガルダジン法は、米国陸軍の要請により飲料水の消毒効果を簡単に測定する試験紙を作ることから着手した経緯がある。シリンガルダジン法は、オルトトリジン法で陽性となる鉄、マンガン、亜硝酸イオンの影響が極めて少なく、モノクロルアミン、ジクロロアミンとの反応性が低いという特徴がある。また、測定範囲は遊離残留塩素として0.1~10mg/lと幅広く、利用できる分野も多くある。



一口に残留塩素と呼ばれていますが、塩素が水道水に残留している状態が3種ほどあります。

残留塩素のメリットは、安全性確保のための殺菌力であり、それは、法律で規定されています(0.1ppm以上)。
我が国の水道水が世界一安全といわれるゆえんが、この残留塩素にあるのです。

逆にデメリットといえば、残留塩素の酸化力にあります。一定の濃度を超すと、この酸化力が胃壁、髪や肌のタンパク質を酸化させてしまう可能性があるのです。0.4ppmまでであれば一般に、味も匂いも感じず、浄水器内の微生物(雑菌)の発生を防止し、身体へ与える影響は無視できるとされています。

[遊離残留塩素]
塩素剤が水に溶解したときにできるHOCl(強い殺菌性)やOCl(弱い殺菌性)と呼ばれるもので、殺菌性があり、有効塩素と呼ばれるものです。ただしPHが高すぎると殺菌性は低下します。PH値の上昇に伴いOC1が増え、PH7,5でHOClとOClの比率が50%となり、殺菌性・殺菌速度はかなり低下します。

[結合塩素]
有効塩素が有機物等と反応する過程で生成されるモノクロラミンやジクロラミンと呼ばれるもので殺菌作用はかなり弱いのです。
オルトトリジンで試薬混入後5分程度おくと発色が濃くなり、その比色基準値から遊離残留塩素値を引いた値が結合値です。この値が高いということは、それだけ有機化合物が水道水に蓄積しているということです。

[総残留塩素]
上記、遊離塩素と結合塩素を合わせた総残留値。


塩素剤の種類

[液体塩素]
塩素ガスをボンベに圧縮し液化したもの。気化した塩素ガスを水に溶解させ殺菌を行う。

[次亜塩素酸ナトリウム液]
最も多く使用されているものでいくつかの使用方法がありますが、一般的には、マイクロフィーダーと呼ばれる注入ポンプによりプール水に混入させ殺菌を行います。結晶化しやすく、注入口などがすぐに詰まってしまうので、定期的な清掃が必要です。機器類に傷をつけないようにしないとそこに結晶がつきやすくなります。

[固形塩素] 学校や、紫外線が直接当たるプール等で使われる場合が多い。直接投げ入れたり、自動で溶解しながら混入させる機器もあります。比較的長期的な塩素剤の保存が可能で、機器類の故障が少なくメンテナンスに手間がかからないので、作業が簡単で確実です。ただ、投入量などの微調整がしにくいのが難点です。



測定方法

残留塩素は比較的分解速度が速いので、採水後、直ちに測定を行ってください。

[オルトトリジン法]
検水にオルトトリジンを加えると塩素(鉄、マンガン、亜硝酸イオン、臭素、ヨウ素、オゾン、二酸化窒素、二酸化塩素)等により酸化され、黄色ホロキノンと変化し、塩素量に応じた濃さで黄色く発色します。オルトトリジンを混入後5秒後に測定した比色値が遊離残留塩素値です。そのまま5分ほど時間をおくと発色が濃くなり、その比色値が総残留塩素値です。
総残留塩素値から遊離残留塩素値を引いたものが、結合残留塩素値です。

オルトトリジンを使用する場合は、薬品量、検水条件、および時間を正確にすることがポイントです。
又、オルトトリジンは『鉄、マンガン、亜硝酸イオン、臭素、ヨウ素、オゾン、二酸化窒素、二酸化塩素等(JIS_K0106)』でも発色するので充分に注意が必要である。
特に、アルカリイオン水(還元水)等はオルトトリジン法では測定不能のため、電気分解する以前の『浄水』状態で測定すべきです。
また、発ガン性があるとされるので、検水は浄化槽のある排水口へ廃棄してください。(2002年4月1日以降は使用できない)

[DPD法] ジエチル-P-フェニレンジアミン法
DPD試薬は中性なので、遊離残留塩素と直ちに反応します。結合塩素とは反応しにくいので、遊離残留塩素値だけの測定ができます。検水にリン酸などの緩衝液を混入後、ヨウ化カリウムを加えると直ちに桃色に発色します。これも残留塩素濃度に応じて発色の濃さが変化します。 * サイトマップ

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