第7回機能水シンポジウム  2000東京大会 -アルカリイオン水の生理効果: 大腸内発酵の抑制と有害産物の産生低下について

アルカリイオン水の生理効果: 大腸内発酵の抑制と有害産物の産生低下について

アルカリイオン水の生理効果:
大腸内発酵の抑制と有害産物の産生低下について



○早川享志、大河内ひさ代、嶋倉崇雄、土谷知恵子、柘植治人
岐阜大学農学部食品科学講座



Physiological Effects of Alkaline-ionixed Water:
Suppression of Cecal Fermentation and Reduced Production of
Harmful Products in the Large Intestine

○Takashi Hayakawa,Hisayo Ohkouxhi, Takao Shimakura
Chieko Tsuchiya and Haruhito Tsuge
Department of Food Science, Faculty of Agriculture, Gifu University

We have shown that long-term ingestion of alkaline-ionized water (AIW) reduced cecal fermentation in rats when they had been fed a highly fermentable commercial diet (MF: Oriental Yeast Co.,Ltd.) and test water (AIW pH9: AIW9 and AIW pH10:AIW10) with tap water (TA) as the control. Fresh feces were collected on week 1, 4 and rats were sacrificed after 8 weels of feeding.Fresh feces from AIW-ingested rats had lower contents. Content or p-cresol was not differ significantly,however, that of phenol decreased in the AIW groups. From these results it was concluded that ingestion of AIW suppressed production of harmful compounds in the large intestine.


【目 的】 水を電気的に分解した陰極側で得られるアルカリイオン水(AIW)は、昭和41年に厚生省により医療物質生成器として医療用具製造承認を受けたアルカリイオン水整水器から得られる機能水である。この効能は、局方の水酸化カルシウムの効能効果を考慮して(1)、胃腸内異常発酵、慢性下痢、消化不良、制酸、胃酸過多に有効であると謳われてきた(2)。こうした効能に加えて、最近では機能水について種々の機能が提唱されつつあるが、AIWについても従来の効能を含めて実験ンデータに乏しい現状であった。しかし、最近の機能水研究の進展に伴い、正しい実験手法の下でその効能が実証されつつある。我々は、消化管機能に対する発酵が通常と比べて著しく高い条件下においては、AIWは、盲腸内における発酵を緩和する効果が認められた。これは、盲腸肥大化の抑制、主要な発酵産物である短鎖脂肪酸含量の低下に基づいている(3)。また、我々はこの作用が、単にアルカリ性とした水や、アルカリイオン水と同程度にカルシウム含量を高めた水では同等の効果が現れないことを確認してきた。AIWのpHがアルカリ側であることから、AIWの摂取が、腸内細菌に対して抑制的な作用を及ぼすのではないかという疑問に対しても、短期と長期の摂取実験を行い、一部の嫌気性菌の検出頻度がAIW摂取群において高くなる傾向が見られるものの腸内細菌数に有意な差は見られず、直接腸内細菌を抑制するということはないと判断した。これらの結果に基づいて我々は、AIWの摂取効果として、従来のアルカリイオン整水器に認められてきた効能の一つである胃腸内異常発酵の抑制効果が証明できたと判断した(4)。我々は、こうした効果に加えて、大腸内産生される他の物質についてもAIW摂取による低減があるのではないかと予想した。大腸内発酵により産出されるものは、短鎖脂肪酸や乳酸といった有機酸以外に、アンモニア、フェノール、p-クレゾールなどの有害代謝産物に加えて、インドールやスカトールといった腐敗産物がある。AIW摂取が、こうした物質の産生・貯留に対してどのような効果を有するかについては知見がない。今回は、アンモニア、フェノール及びp-クレゾールの生成量について検討を行った結果について報告する。

【方 法】 実験動物としては、4週齢のWistar/ST系Clean雄ラットを日本エスエルシー(株)より購入し、予備飼育の後、1群7匹とする3群を設けた。水道水を電気処理をせずに摂取したものを対照(TM群)として pH9及び pH10のAIWを実験水として投与した(AIW9群及びAIW10群)。これらのAIWは、それぞれ専用のオムコMC(株)製Mimeone ROYAL NDX-31OH(電解時に乳酸カルシウムを添加)を用いて調整した。飼育途中(2,4及び8週目)に、新鮮糞を回収し、短鎖脂肪酸、乳酸及びアンモニアの測定サンプルとした。8週間の飼育の後、生理的食塩水で洗浄し、水分を拭ったのち組織重量を測定した。盲腸内容物については、短鎖脂肪酸、乳酸、アンモニア、フェノール及びp-クレゾールの測定に供した。なお、短鎖脂肪酸はGLCにより、乳酸は酵素法により、アンモニアはConwayの微量拡散容器で補修の後、Nessler法により、フェノール及びp-クレゾールはHPLCにより分析を行った。

【結果及び考察】 ラットの体重増加量、飲水量、飼料摂取量、飼料効率及び小腸と結腸+直腸の長さ等に差はなく、特に外観的な違いも認められなかった。新鮮糞に含まれる総短鎖脂肪酸含量については、4週目及び8週目においてAIW9群及び10群で低下傾向が認められ、酢酸についてはAIW10群において有意な低下が見られた。新鮮糞に含まれる乳酸含量は、短鎖し膨酸量と比べ、その含量は低く、2週目及び4週目ではどの群もほぼ同じであった。しかし、8週目ではAIW群でむしろ高い傾向が認められた。新鮮糞に含まれるアンモニアについては、TW群に比べて初期では低下傾向しか示さなかったが、8週目にはTW群より有意に低い値を示した。盲腸については、組織重量、内容物重量ともに有意な差はなかったが、総短鎖脂肪酸含量は、AIW群で低下傾向が認められた。盲腸内容物中の乳酸含量については、有意な差はないものの、AIW群ではTW群に較べて高い傾向があり、新鮮糞の結果と同様であった。一方、盲腸内容物中のアンモニア含量は、AIW群ではTW群に較べて低い傾向が認められた。盲腸内容物中のp-クレゾール含量は、どの群もほぼ同程度であったが、フェノールについては、AIW群ではTW群の約半分程度にまで低下しており、統計てきにも有意であった。

以上の結果から、長期のAIW摂取により、糞中のアンモニア、盲腸内容物中のアンモニア、フェノール含量の低下がみとめられたことから、AIW摂取は、アンモニアやフェノールなどの有害産物の産生に対しても抑制的であることが明らかとなった * サイトマップ

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