第7回機能水シンポジウム  - アルカリイオン水の物理化学的性質

アルカリイオン水の物理化学的性質

○菊地憲次、岡谷卓司、小久見善八、才原康弘、野口弘之
滋賀県立大学・材料科学科、京都大学大学院・物質エネルギー化学、
松下電工株式会社・電器R&Dセンター



Physicochemical Properties of Electrolyzed Alkaline Water

○K.Kikuchi, T. Okaya, B. Rabolt, Z. Ogumi, Y. Saihara and H. Noguchi
Department of Materials Science, The University of Shiga Prefecture,
Department of Wnergy and Hydrocarbon Chemistry, Kyoto University,
Matsushita Electric Works, Ltd., Home Appliances Research & Development Center.


  Supersaturation of hydrogen effused from a flow electrolytic cell was studied under various electrolysis conditions. The degree of supersaturation decreased with an increase in the supply rate of electrolytic water to the cell. Hydrogen concentration at the electrode surface was obtained from the hydrogen concentration in electrolyzed water using boundary layer model. Diameter distribution of hydrogen microbubbles (hydrogen particles) in an electrolyzed alkaline water was obtained by means of the dynamic light scattering method (DLS). Distrbution of partickes diameter had two peaks. Mean diameter of hydrogen particles distributed mainly from 20 nm to 300 nm. The mean diameter decreased with an increase in current density up to 0.60 Adm-2. Hydrogen existed in particles as a colloidal solution in a region of hydrogen content in electrolyzed water above 0.75 mM,which was a saturated concentration of dissolved hydrogen.


データ1
データ2
データ3
1.緒 言
 水を電気分解すると、カソード室(陰極室)から得られるアルカリ性の電解水(アルカリイオン水)は過飽和の水素を含むことが知られている。しかし、電極表面における水素濃度と電解水中の水素濃度との関係は知られていない。また、過飽和水素の存在状態についての報告も見られない。電解条件と水素濃度との関係を求め、さらにこの過飽和の水素の存在状態を動的光散乱法(DLS)、溶存水素計などの方法で定量的に把握することを試みた。

2.実 験
 (電解水の調整) 市販されているアルカリイオン整水器と同等の機能を備えた電解装置を作製した。超純水で調整した電解質溶液に、高純度窒素ガスまたは水素ガスで溶存酸素を除去した。この電解質溶液を25nmの孔を備えたフィルターでろ過したのちポンプで電解セルに供給した。電解に用いた電極は、チタンに白金を焼成してコートした電極、チタンに白金を電解メッキした電極、チタンに白金ーイリジウム合金でコートした電極および白金電極を用いた。

3.結果と考察
 水素濃度と電解液の供給速度との関係をFig.1に示した。電解質溶液のセルへの供給速度が大きくなると溶存水素濃度は小さくなる。これにより電解によって生成した水素が溶解する割合は供給速度とともに増加し、60%近くまで達することが明らかになった。平行に配置した電解槽の中に電解質溶液を層流となるように供給して電気分解を行うと、電極表面の水素濃度と電解溶液中の水素濃度との関係は次式で表されることが明らかとなった。1)

         N1V-1/2=K(C0-Cb/2)

ここで、N1(mmol/cm2s),V(cm/s),Co(電極表面積濃度mmol/L),Cb(バルク速度 mmol/L),K(定数)を示す。Cb/2N1V-1/2のプロットをFig.2.に示す。実験結果はよい直線性を示し、この実験系は上式が適用できる系であることを示している。得られたC0の値は、Shibata 2) が報告した過飽和に関する値よりも小さくなっている。
DSL の測定から直径が20~300nm程度の水素粒(hydrogen particle)が存在し、5次間以上この存在が確認された。このとき水素濃度は、約5時間で飽和濃度の0.75mMになったことから、水素濃度が過飽和のときに水素粒が存在することを明らかにした。
 電解水中の水素濃度測定したとき化学分析値と溶存水素計(DH-35A)の値との関係をFig.3に示した。溶存水素計では、水素濃度が1.0mM以上の値を示すことはなかった。しかし、化学分析によると、2.5mMまで検出された。そこで、電解水を電解後にただちに5倍に希釈して溶存水素計で測定すると化学分析と同じ値となることを見出した。電解水中に溶存水素計で測定できない水素が存在する理由は、水素の一部が、微小の水素気泡として存在するためであることを明らかにした。


1) E.L.Cussler, Diffusion Mass Transfer in Fluid Systems,Cambridge University Press, 1997.
2) S.Shibata, Bull. Chem. Soc. Japan 36, 53(1963). * サイトマップ

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