「若返る水」と「老化が進む水」

「若返る水」と「老化が進む水」
信州大学名誉教授  松崎五三男

いい水、悪い水を科学的に分析する

近年、水が健康に及ぼす影響について、大きな関心が寄せられています。しかし「体にいい水」とか「悪い水」といっても、その水が科学的にどんな性格であるかについては、あまり知られていないようです。
水の性質を分析する方法はいくつかありますが、よく知られているのが「水素イオン濃度指数(pH)」でしょう。pHは、酸性、中性、アルカリ性を表す指数で、pH7.0を中性とし、これより値が低くなるにつれて酸性、高くなるにつれてアルカリ性を示します。
人間の体液はpHが常に7.4前後の弱アルカリ性に保たれています
これは生命を維持するために非常に重要で、私たちの体にはpHを調節して一定に保つ働きが備わっています。ですから、弱アルカリ性の水を飲んでいればpHを調節するうえで体にかかる負担が小さくなり、健康にいいといわれています。
しかし、単に弱アルカリ性の水というだけでは、実際には残念ながらそれほどの効果は期待できません。その水が体にいいかどうかを判断するには、pH以外にも重要な要素がいくつかあるのです。

なかでも特に大事なのが「酸化還元電位」です。酸化還元電位とは、ある物質がほかの物質を酸化する力、あるいは還元する力の強弱を表すものです。
ここで、酸化と還元について説明しておきましょう。酸化といえばすぐに思い浮かぶのが、鉄にサビが生じる反応です。こうしたイメージからか、一般に酸化というのは「酸素がある物質を変質させていまう現象と捉えられているようです。
しかし正確には、酸化とは、「物質から電子が奪われること」であり、反対に「物質に電子が与えられること」を還元といいます。つまり、酸化と還元というのは、物質間の電子のやりとりのことなのです。
酸化還元電位というのは、この電子のやりとりをする力を示す指標です。酸化還元電位が高いと、物質から電子を奪う、つまり相手を酸化させる力が強くなります。逆に低いと、物質に電子を与える、つまり還元する力が強くなります。

いい水は活性酸素を消去し老化を防ぐ

人間は酸素を摂取することで生命を維持していますが、体内に入った酸素のいくらかは「活性酸素」に変化します。最近、この活性酸素が病気や老化を引き起こす原因だとして、大きな話題になっています。
活性酸素の正体を簡単にいうと、酸素が体内に入って変化し、電子の状態が不安定になったものです。
普通、電子は2個のペアを組んで安定しています。ところが、なにかの理由でこのペアが壊れてしまうと、相手を失った電子は、ほかの物質から電子を奪いとって安定しようとします。つまり、ほかの物質を酸化させてしまうわけです。
私たちの体にはもともとこれを防ぐ働きが備わっています
しかし、体内で活性酸素が増えすぎると、その防御機能も追いつかなくなり、体の組織の酸化が進んでしまいます。その結果、細胞や血管が傷つけられたり、ガン細胞が活性化されたりして、病気や老化が引き起こされると考えられているのです。
この活性酸素の害から身を守るためには、酸化還元電位の低い水を飲むことが役立ちます。
酸化還元電位の低い水は、還元力が強いーーーつまり相手に電子を与える水です。この水を飲むと、体内の活性酸素に電子が供給されて、活性酸素のペアなしで不安定だった電子が安定し、活性酸素が活性酸素でなくなるのです。
日本の水道水は、地域で差がありますが、酸化還元電位が500~700ミリボルト台という高い数値を示します。これでは、とても体にいいとはいえません。むしろ活性酸素の発生を即し「老化を進める水」だといっても過言ではありません。
とはいえ、酸化還元電位が極端に低いものも、あまりいいとはいえません。飲料水として理想的なのは、酸化還元電位がマイナス250~プラス100ミリボルト(Aki注:補正前の数字に書き換えています)台の水です。

究極の若返る水の条件とは何か?

もう一つ大事なのが、水の「クラスターの大きさ」です。
水は2個の水素(H)と1個の酸素(O)が結合したH2Oの化学記号で表されます。ところが、実際の水の構造をみると、H2Oという1個の分子が単純に多数存在しているわけではありません。水の分子同士がお互いに引き付け合って、いくつかの水分子が結合しているのです。この結合した水分子のかたまりを「クラスター」と呼びます。
通常、水のクラスターは平均12個の分子から成っていますが、そこになんらかのエネルギーが加わると、水分子の結合が分裂して、クラスターが小さくなります。この「小さな水」が、老化を防ぐさまざまな働きをしてくれるのです。
クラスターが小さい水は、体内に吸収されやすく、そのぶん普通の水より新陳代謝を活発にする効果が高いのです。新陳代謝が活発になることで、体内で不要となった老廃物が早く排出されるようになります。
クラスターの小さい水を飲み続けると、血液の水分のクラスターも小さくなり、血液がサラサラとしてきます。そのため、血栓、(血管内にできる血液の塊)ができるのが防がれ、血栓によって起こる脳卒中や心臓病の予防にもつながります。
さらに、クラスターの小さい水は溶解力(物質を溶かす力)が高く、血管に付着したコレステロールを溶かし、血圧を下げる働きがあることも認められました。
また、水に溶け込んでいる酸素やミネラルも水の性質を左右します。これらもそれぞれ測定する方法があります。例えば、「電気伝導度」という方法で水中のイオンの総量を調べることで、その水にミネラルが多く含まれているかどうかを測定することができます。
しかし、これは一概に多いほうがいいとか、少ないほうがいいとかいえません。例えば、海水はミネラルをたいへん多く含んでいるので、電気伝導度は高い値を示しますが、海水を飲もうという人はいないでしょう。どんなミネラルがどのくらい含まれているか、そのバランスがたいせつなのです。
さて、ここで科学的見地から、いい水の条件を整理してみましょう。

活性酸素の害による病気や老化を防ぐという意味から、最重要だと考えられるのが「酸化還元電位が低いこと」です。「pHが弱アルカリ性であること」や「クラスターが小さいこと」、「さらに「ミネラルがバランスよく含まれていること」もたいせつです。
これらの条件を満たすものこそ、究極の「若返る水」だといえるのではないでしょうか。
*クラスター理論は2005年現在、否定されています
*この章は「ゆほびか9.1997」より転載。

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