進む地下汚染ーあなたの地区も汚染されている

地下水汚染 相次ぎ発覚 2001年2月25日朝日新聞ー埼玉版

遅れる報告 募る不安

大きな工場の集まる大宮市や与野市を中心に、地下水汚染が相次いで発覚している。公表は事実上、企業の自主性にまかされていることもあって、企業側の発表はいずれも遅れがちだ。行政の取り組みは後手に回っているように見え、住民の不安は消えない。問題の背景を探った。
(長野 暁子)


大正製薬は今月六日、大宮工場(大宮市)の地下水汚染について発表し、環境基準値の二千七百倍のトリクロロエチレンと一千倍のテロラクロロエチレンが検出されたと明らかにした。昨年九月に土壌汚染を確認しながら五ヶ月も公表していなかった。
二十二日には日本ピストンリングが与野工場(与野市)の地下水から環境基準値の四千倍のトリクロロエチレンが検出されたと発表した。昨年末までに検出していたのに発表は二ヶ月余り遅れた。
これに先立ち、昨年八月には大宮市などにある三菱マテリアルの県内三施設で環境基準値の三百六十倍のカドミウムや八千倍のトリクロロエチレンが検出されたことが、十月には富士写真フイルムの子会社の富士写真光機(大宮市)で環境基準値の九千倍という地下水汚染の実態がそれぞれ発表されたが、ともに公表は遅れた。
「この辺の地下水が汚れていることは、何年も前からわかっていた。今ごろ発表するなんて許せない。」
大正製薬大宮工場の近所に住む薬剤師の男性(55)は六年前に、自宅の井戸水を知り合いの検査業者に自費で分析してもらった。環境基準値の九倍の四塩化炭素が検出され、「飲用に適さない」と判定された。翌年は環境基準値を上回るトリクロロエチレンも検出された。
この男性からの連絡で、大宮市役所は当時、改めて検査した。その結果、「確かに(有害物質が)出ている。井戸水は飲まないで下さい」と説明された。しかし、「工場が多く、一つ一つ調べるのはとても無理」という理由で、汚染源は特定されないままだった。
健康被害を恐れて男性方では水道水を飲まず、市販の飲料水を六年間買い続けてきたという。
機械洗浄用のトリクロロエチレンとテトラクロロエチレンは「引火性がなく無害」として、1970年代まで全国の工場などで盛んに使われた。六十三年にできた大正製薬の大宮工場も七十五年まで使用していた。
どうして企業側の公表が遅れるのか。
地下水汚染では企業に調査や報告を義務付ける明確な規定はない。汚染の有無を調査し、その結果をどう公表するかは企業側の判断にまかされているのが実情だ。健康被害が確認されれば行政が命令をだす。
大正製薬の説明によると、同社は土壌汚染を確認した昨年九月の時点で「(すぐに公表するかどうか)迷った」(広報室)。
しかし、その段階では汚染源が特定できず、対応策も決まっていなかったことから、株式市場などでの企業イメージも含めて検討し、結果的に早期の発表を見送ったという。

大正製薬が汚染を公表してから二週間で、住民たちからの問い合わせは八十件を超えた。
行政側も動き出した。県は県環境保全条例を策定中だ。有害物質を扱う事業者が地下水や土壌の汚染を見つけた場合、県への報告や公表を義務付ける内容で、違反した場合には罰則も適用される。早ければ今年六月の県議会に条例案を提案する方針だ。
それでも、県による有害物質の監視方法はそれで十分なのか。有害物質を処理する費用負担をどうするのか。汚染情報の公開方法も含めて課題はなお多い。

検出された主な汚染物質

■テトラクロロエチレン
  有機塩素系の溶剤で無色、常温で不燃性の液体。水より重く地下に浸透しやすい。ドライクリーニング、金属部品脱脂洗浄などに使用される。肝臓や腎臓に障害を及ぼすとされ、発がん性の疑いが指摘される。
■トリクロロエチレン
  性質や毒性はテトラクロロエチレンと同じ。油分や繊維製品などの汚れを落とす目的で、特に半導体製造産業などで使われている。
■四塩化炭素
  塩素系勇気溶剤。不燃性で無色の液体。長期にわたって吸収すると、疲労、食欲不振、体重減少などを引き起こす。染料やゴム、樹脂工業などで使われる。

周辺10井戸で基準超す 2001年3月9日 朝日新聞ー埼玉版

与野・日本ピストンリング地下水汚染     北東側、最大110倍

与野市本町西五丁目の日本ピストンリング与野工場の地下水から環境基準値の四千倍のトリクロロエチレンなどが同社の調査で見つかった問題で、工場周辺の民家の井戸百一本について県と大宮市、同社で調査した結果、十本のいどから最大で基準の百十倍のトリクロロエチレンなどが検出されたことが八日、分かった。県は調査結果から汚染範囲を工場の北東ー東部約五百メートル以内とみてさらに範囲を絞り込む一方、井戸水を飲まないよう住民に注意を呼びかける。

調査対象は工場から半径五百メートル内にある与野市円阿弥、桜丘、八王子、本町西、本町東地区と大宮市桜木町四丁目、三橋三丁目、上小町地区の民家の井戸百一本。その結果、工場北東部にあたる与野市本町東六、七丁目地区を中心に計十本の井戸から、地下水一リットルあたり最大で基準の百十倍の三・四ミリグラムのトリクロロエチレン、同二十二倍の0・二十二ミリグラムのテトラクロロエチレン、同十六倍の0・六四ミリグラムのシスー1、2-ジグロロエチレンなど、環境基準を超える汚染物質を検出した。
基準以下の汚染物質を検出した井戸は二十七本、不検出の井戸は七十四本だった。六価クロムはすべての井戸で検出されなかった。また、工場内の井戸三本について県などが改めて調べた結果、それぞれ地下水一リットルあたり、基準の五千倍の百五十ミリグラムのトリクロロエチレン、同二千倍の二十ミリグラムのテトラクロロエチレン、同二千二百倍の百十ミリグラムの六価クロムを検出。先月発表された同社の調査結果とほぼ同様の値を示した。


参考資料は下記をクリックしてください。
地下水(井戸)の水質検査 

いろんな食品等の酸化還元電位へ 

全国各地の水道水の酸化還元電位表へ 

活性酸素が原因といわれる疾病・疾患の一覧へ 

全国の水道水の変異原性レベルの図へ  * サイトマップ

上へ